2020/02/29
[長岡純便り vol.22] 子供を亡くすということ -こころの処方箋-

先日ある人から、「ティーンエイジャーのお子さんを亡くした友人にどう接したらよいか困っています。また、その悲しみから立ち直るにはどれくらい時間がかかるのでしょうか?」と質問されました。実は私の知人にも同じような悲しい出来ごとが起こったばかりで、私も心を痛めていたところでした。
多産だった昔と比べてこの頃は子どもを亡くす人は少なくなりました。周囲の戸惑いも当然だと思います。起って欲しくありませんが、万が一身の回りにそのようなことがあった場合の心得にもなりますので、大切なことを書いてみたいと思います。
どれくらいで立ち直るのかという質問に、私は「何をもって立ち直るというのかにもよりますが、5年、15年、いえ、もっと長い時間が必要かもしれませんね」と答えました。
この「立ち直る」という表現ですが、「その子がいないという現実を受け入れて生きられるようになる」という理解がより現実に近い気がします。
かけがえのない存在であり、自分の命を未来につなげてくれるはずだった我が子が先に亡くなったという事実は、頭ではわかっても心が受け入れることは容易ではありません。心が受け入れられるようになるまでには紆余曲折と、長い長い時間が必要です。
悲しみの強さは時間と共に徐々にやわらいでいくと思いますが、十分悲しむこと、悲しみをこじらせないことも大切です。家庭、職場、個人的な性質などいろいろな事情から、悲しんでいられない、自分がしっかりしなくては、という場面もあるかもしれません。そんな時気丈にふるまうことはできても、押しこめられた悲しみは必ずいつか何らかの形で表に出されることになります。
一見元気に過ごすことができていると、悲しみを克服したかのように見えるかもしれませんが、悲しみの感情は何らかの必要があって、無意識のレベルで一時的に凍結保存のような状態になっているだけです。
私の経験からですが、悲しみの感情を表に出す機会が喪失から早い段階に得られた方が、後の回復がスムーズであるように感じます。そのためにも周囲からの配慮あるサポートは重要です。
亡くなったお子さんのことを親御さんが自発的に話したり泣いたりする時は、黙って聴いてあげてください。悲しみを言葉にするには安心して話すことのできる相手が必要です。支離滅裂になったり、同じことを何度も繰り返し話すかもしれませんが、それも想定内です。
悲しむ親御さんへの言葉かけはとてもセンシティブですし、勇気もいると思います。会話での親御さんの言葉はそのまま受け止めてあげてください。「早く元気になって」「他にも子供がいてよかった」「悲しいのはあなただけじゃない」などの声かけは、残された親の心を傷つけます。励ましや慰めの試みは、逆効果なことが多々あります。まずは聴くことに徹して気長に静かに寄り添うことです。